この物語を、協力してくれた皆さんに捧げます。お納め下さい。
え、要らない?まぁそれならそれで良いや。

誤字脱字明らかな設定間違い世界結界等あったら指摘よろしく(←)

??

さぁ、はじめよう。

物語の続きを。

風桜・忍の物語を。

彼女を取り巻く人々の物語を。

これが終わった時、変われるのは彼女だけじゃないはずだ。

プロローグなんか、とっくに終わっている。

だってそれまでにも、彼女達は居たのだから。

彼女達は人生と言う名のストーリーを示し続けていたではないか。

物語はエピローグに近づき続けている。

この物語が大切な人のエピローグにならないことを祈ってくれ。

さぁ、はじめよう。

物語の続きを。
水之里風桜一族…忍びの掟。

一つ・感情を持ってはいけない

一つ・信じてはいけない

一つ・関わってはいけない

一つ・迅速に正確に任務を遂行する

以上に背くものは………………


??

○前回までの粗筋
あるところに、風桜・忍(かざくら・おし)と言う少女がおりました。
少女は、忍びの家に生まれ、忍びとして育ちました。
少女は、人として育てられませんでした。
少女の生まれた里では、人と忍びを区別していました。
忍びは、人よりも生まれながらにして地位が低く、全てにおいて劣っているのだと言われていました。
人である主のために命を落とすものなのだと、教えられました。
少女は、それに何の疑問も持たずに、忍びとして育ちました。

ある時、少女が初めて里の外に出る機会がありました。
学校に通うことでした。
少女は外の世界にとても興味があったので、学校に行くのがとても楽しみでした。

少女は、学校で色々なことを学びました。
人であるはずの生徒が、友達になってくれました。
少女にとって、それはとても申し訳なく、しかしとても嬉しいことでした。

ある時、友達の少年が言いました。

「それで……幸せか?」

少女は、迷ってしまいました。
自分は幸せなのだと、思っていました。
しかし少女は、卒業した後は家を継ぐため、里に篭ることになっていました。
それが、とても嫌な事だと気付きました。
その少年は、嫌なら忍びをやめれば良いと言いました。

忍びをやめる。
それは、少女の運命を変える話でした。
少女は、忍びをやめたいと思いました。
なぜなら、少女には感情があります。皆が幸せになれば良いと思っています。
どうして、そんな子に忍びが勤まるでしょうか。

忍びをやめるには、どうすれば良いのか分からなかったので、同じ水練忍者に聞きました。

『忍サン、忍びは、確かにやめられるものです。
けれどその方法は、わかりません。』

予想外の返事でした。
ですが、それは少女を落ち着かせる言葉でした。

『…ただし、想像の域を出ない助言でも良いのなら
 戒律を捨てればいいと、思う。』

それなら、里の長…ババ様に、聞いてみれば良い。
少女はそう考え、意を決して里に聞きにいきました。





○壱之章
バイクで半日ひた走り、水中を移動し、獣道を水音が聞こえなくなるまで進んだ所に、おしの里はありました。
里は、いつもと変わらず落ち着いた、静かな場所でした。
おしが家に入ると早速、教育係に目を付けられます。
教育係は、おしの肉体的、知能的訓練を行う人のことです。
同じくらいの身長でありながら、態度が高慢です。

「あらあんた、また帰ってきたの?
もう帰ってこなくて良いって言ったじゃない。
そんなに一代様に気に入られたいワケ?」

一代というのは、ババ様の名前です。
いつもこんな調子で、常に冷たく接します。
そしていつも、おしが無表情でそれをただただ聞きます。
ですが、今回は違いました。

「……ババ様に会います。どいてください。」

いつになく真剣な瞳に見詰められ、教育係は思わず道を譲ります。

奥の通路のそのまた奥に、ババ様…風桜・一代(かざくら・かずよ)はいました。
一代は、優しそうなおばあさんで、しかし教育係と同様に、背は小さいように見えます。
座って、お茶をたてています。
おしにとっては、いつもと変わらない光景でした。

「…どうしたんだい?……今月はもう帰って来ないと思っておった。」

いつもと変わらぬ、優しい声で言います。


「ババ様…お聞きしたい事が。」

「申してみなさい」

「はい。……忍びとは、何なのでしょうか。」

「そんな事を聞きに来たのかい?忍びは…主を護るために全てを捧げるものじゃ。
主の為に死を選ぶのが、忍びの仕事。……何故、そのように疑問をもつことがある?」

「はい…おしは、思うのです。それで死んだら…主を護れなくなります。
忍びは…主を護るのと同時に、自分の命も護らないといけないのではと。」


「何を言っておる。忍びなぞ、吐いて捨てる程おるのじゃ。
忍は心置きなく、主の為に死ぬべきじゃよ…。」

「……納得、しかねます。無くなって良い命なんて…ありません。」

「納得など、する必要もない。忍びは、主の言われた通りに動けば良いのじゃ…。」

「……ババ様。…おしは、忍びをやめたく思います。」

「忍びをやめる?何を馬鹿な事を…。」

「忍びはやめられるものと、忍びの仲間から聞きました。
おしは…忍びには、向いておりません。」


「…向いている向いていないの話ではないのじゃよ。
忍びに仲間なぞおらん。そんなものより、主の言う事を聞きなさい。」

「…ババ様…忍びに仲間は居ない?…ここに居る皆は、仲間じゃないのですか?
それに、この家には主が居ません。ババ様だって、忍びではございませんか。
主の居ない忍びなぞ、必要ありません…!」


「……忍。おぬしを外に出したのは間違いだったようじゃな。
要らない知識を手に入れおって…知ったような口を利きおって…!
主を護れず、忍びをやめる等とほざく小娘は、この場で無きものにしてくれるわ…!」


そう言うと、一代は犬笛のようなものを吹きます。
音はあまりしませんが、頭が少しキーンとなります。
それは、合図でした。
どこからかわらわらと忍びが集まってきます。さっき居た教育係も居ます。
全員背が小さく、小学生くらいです。
ただ、髭面だったり老けてたり、明らかに大人のように見える者も10人程混ざっています。

「ババ様…その矛盾が、何故分からないのですか…?
今のババ様はとても感情的で……まるで……人のようです。
ババ様…自分が人であると、何故分からないのですか…っ」


「…煩い……煩い…!おぬしは掟を犯したのじゃ…殺してやるわ…!」


いつもの優しいババ様じゃありません。
昔は、こんなではなかった…と思った時、おしはあることに気付きました。
何故矛盾が生まれているのか、気付いてしまいました。



この人は…「見えざる狂気」に陥っている。



それは、ババ様だけじゃありませんでした。
よく見ると、教育係を含めた大人達も、怒りをあらわにしています。
大人になりきっていない者も、その狂気に惑わされているようです。

……そうか、そういうことか……

おしは目を伏せ、少し息を吸い、吐きました。
その間にも、敵は目前まで迫ります。





○弐之章
その時、妙な事が起きました。

時がゆっくりになり………止まった。

…一般人には、そう思えたでしょうか。
それは、おしの気魄から来る幻覚。


心に巣食う水の鬼よ、風桜家次期総統の名において命じます。
目を醒まし…この里を、狂気から解放して下さい。

「…眠り姫の力、見せて差し上げます。」




<<イグニッション!>>





おしの力が解放され、宙には瞬時に兎のぬいぐるみ2体が踊った。
その瞬間……!


「う、うわああああ!!!」

まだ子供である忍び達が、一様に騒ぎ出す。
彼らはまだ、一般人だ。
そりゃあぬいぐるみが宙を舞い、人とは思えない程の身のこなしで攻撃を避けられたら、一般人なら誰でも混乱します。
大丈夫か、世界結界!?


…しかし、おしにはそれを考えている余裕は、ない。
なぜなら今目の前で、教育係の忍者刀がおしに向かっているのが見えたからだ。
おしはその攻撃を、灰色兎の黒星さんで受け、体勢を立て直しつつ黒兎のリトルさんで反撃を試みる。
リトルさんは一般人の忍びの間を縫い、教育係に一打を与えた。
人に当てないように攻撃するには、ババ様は…遠すぎる。

と、その時。

…ガッ!!

…と言う音と共に、腹に痛みが走った。
見えない狂気に陥った忍び達が、一斉に攻撃を仕掛けてきた。

人数的に、おしは劣っていた。
おしは1人、相手は…ババ様を含め、11人。

勝てるはずが無い…。

だが、それを承知でおしは里に戻った。
忍びをやめるのには、それ相応の処遇が待っている。
それを受けてでも、おしは忍びをやめたかった。

帰りたい場所が、ある。
護りたい人が、いる。

それが、おしの生きがいだった。

「ここまでだよ…風桜・忍…!」

ババ様が、そう言い放ったのが聞こえた直ぐ後。
忍び全員の攻撃が止まった。

「……おし?」

止めたのは声の主。
声の主は小さな少女。
彼女は、続けてババ様に問う。

「かざくら・おし…と、ババ様はそう言うたかぇ?」

その問いに、籠を持った更に一回り小さい少年が代わりに答える。

「俺にはそう聞こえました、しの姉上様。」

「そうか…この人がおし。童の姉上だったのじゃな。姉上も護れず何が妹弟じゃ!
 …そうじゃろう?にん?」

「…ババ様の敵は我の敵じゃねかったんで?」

「それとこれとは話が別じゃ!ゆくぞ!にん!姉上をお守りするのじゃ!」

「あい、わかった。」

「しの」と呼ばれた少女が持っているのは鋼糸。
それが部屋中に張り巡らされ、忍びの動きを止めている。
そこに「にん」の持つ籠が、衝撃波を放つ。

彼女達は何者なのか。
考える前に次の一手が迫る。
おしは必死に黒星さんとリトルさんを駆使して回避する。
今は考えている暇は、ないようだ。


…ところで。
おし達が戦っている間、その様子を見ている人が居た。
「やっと…時が来た。俺の仇を倒す時が……」
その人は苦しそうに、指に付けたリングを撫でた。





○参之章
「全く、ここまで育てたのに…役に立つヤツがいないねぇ。教育係は何をしておったのじゃ。」

乱戦が次第に収まり、いつの間にか室内に立っているのは、おしとババ様のみとなった。
おしは今の戦いでかなり消耗し、肩で息をしている。
「しの」と「にん」も、今は戦いに疲れ、地べたに倒れている。
一方のババ様は、戦いの全てを忍びに任せていたのでほぼ無傷だった。

「…でも、もうここまでのようだね?さぁ、逝きなさい…。」

ババ様が思い腰を上げ、鎖鎌を振るう。
おしのリトルさんがそれに反応し、ババ様に向かう。
そして同じ軌道を黒星さんが追った。

ババ様が2つの攻撃を受けるのと、鎌が変則的に軌道を変えておしを切り裂くのが、ほぼ同時。
おしは、これが限界だった。
どう…っと床に倒れこむ。

足音が近づいてくるのが分かる。
痛みで、体が温かい。
目に映るのは、自分の血液。
意識が、どんどん遠くなる。

今度こそ、もう駄目…かも。


「こんなトコで、諦めてちゃって良いの?皆、貴方の帰りを待っているわ…風桜・忍。」

頭に響く声がした。

そうだ…帰らなくちゃ……帰らなくちゃ…っ
…おしには…やり残した事が、沢山ある…
帰りたい場所が…ちゃんとある…!

「まだ…まだ負けられない…!」

おしが肉体を凌駕し、立ち上がる。
それに手を貸す1人の男。

「お…お前は…!!」

「…桜…さん?何で…」
何で貴方がここに。
その言葉を遮るように、風宮・桜(かざみや・さくら)が言葉を放つ。

「一代サン…そんな風に生きていると、辛いわよ?」

紫色の長い髪を揺らし、不敵に笑って見せた。

「忍チャン、話はアトよ。もうちょっと、一緒に戦ってくれるかしら?」

「は…はい…!」

「おのれ…!次々と邪魔ばかりしおって……!!」

怒りに任せたババ様の攻撃を、桜は忍び以上の身のこなしで避ける。
おしがリトルさんと黒星を操り、桜が使役ゴーストであるスカルサムライのシロちゃんを操る。

おしの兎達が突撃し、シロちゃんが切り裂き、桜は光の弾丸を指で弾き出す。
その攻撃には、流石のババ様も耐え切れなかった。